IVUSはPCI施行中に血管壁やプラークの性状を直接観察できることから, No reflow/Slow flowとの関連でプラークの性状を評価する研究にも用いられてきた. その代表例がWu et al. (2011)であり,HORIZONS-AMI試験のサブスタディとして, primary PCIを施行されたAMI患者を対象にIVUSによるプラーク組成評価を行い, 不安定で血栓形成性の内容物を反映する低輝度プラークである 「減衰プラーク(attenuated plaque)」に着目したwu2011. 同研究では,医師による手動のアテニュエーションスコアリングにより定量化した 減衰プラークの量が,PCI後の血管造影上の血流がNo reflow/Slow flowを 合わせた複合基準(TIMI flow grade 2以下)を満たした患者と満たさなかった患者との 間で有意差を示した一方,減衰プラークの存在の有無自体には有意差が認められず, その量においてのみ有意差が認められた. この結果は,減衰プラークが多いほど血栓形成や微小血管閉塞が生じやすく, No reflow/Slow flowのリスクが高まることを示唆している. 一方でこのスコアリングは医師による手動評価にとどまっており, 本研究はこの評価をいかに自動化・客観化するかという課題を引き継ぐものである.
深層学習をIVUS画像に応用した研究としては,Nishi et al. (2021)が, CNNベースの自動セグメンテーション手法によりIVUS画像から lumen・vessel・stentといった血管構造を自動的に抽出し, 専門医による手動解析と良好な一致を示したことが挙げられるnishi2021. しかし同研究はあくまで血管構造の自動セグメンテーションを目的としたものであり, No reflow/Slow flowのような臨床アウトカムの予測までは扱っていない.
No reflow/Slow flowの予測モデルに関しては,IVUS画像を用いた研究以外にも 検討が進められている. Li et al. (2025)は,急性冠症候群(ACS)患者におけるPCI後のNo reflow現象を 予測する既存モデルを体系的にレビューし,Killip分類や虚血時間, 血栓グレード,D-dimerといった臨床・血管造影・検査値に基づく変数から 構築された複数のモデルが既に提案されていることを示したli2025. しかし,同レビューで取り上げられたモデルのいずれも, IVUSから得られる画像由来の特徴量を組み込んだものではない. すなわち,前述のWu et al.やNishi et al.の研究も踏まえると, IVUS画像と臨床情報・病変特徴を統合してNo reflow/Slow flowを予測する アプローチはこれまで十分に検討されておらず,本研究はこのギャップを埋めるべく, 両者を統合した予測モデルの構築に取り組むものである.