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SmTIAS-LightSim / docs / 05_TECH / TECH_10_残差主因候補の網羅整理.md

残差 2.63× の主因候補の網羅整理 (Residual Cause Candidates Enumeration)

本ドキュメントは TEST_01 Step 8-13 で確定した シミュ vs 実機の残差 2.63× の主因候補を網羅的に整理したものである.Step 8-14 以降の物理モデル精緻化で「何を試すか」の判断材料として作成した.

結論(先に) (Conclusion First)

順位候補影響度検証コスト推奨理由
🥇 1 位A1. 内壁の非 Lambertian 性(光沢成分)大の可能性中「形」を変える可能性が物理的に最も高い.3D プリンタ白フィラメントは完全 Lambertian とは限らない
🥈 2 位A8. 反射率 R=0.85 → 0.89(物理整合点)中低Step 8-6 で導出済の物理整合点.新方針 (linear+LSC) 下での再評価
🥉 3 位A9. max_depth 8 → 16+小〜中低後段多重反射の取りこぼし可能性
4 位D1. シミュ ROI と実機 ROI の物理的整合✓ クリア—2026-06-02 検証完了:物理サイズ差 < 1%・中心位置差 < 1 mm で整合.残差主因から除外(§ D1 検証結果 参照)
4 位B1. 筐体内部の幾何精度中高3D プリンタの実物理表面 vs 設計表面
5 位A2/A3. LED 配光の個体差・樹脂ドーム小〜中高データシート Lambertian 整合済 (TECH_09)

→ 「内壁の非 Lambertian 性(光沢成分)」が最有力候補.次いで反射率精度・反射回数の組み合わせ調整.

背景 (Background)

Step 8-13 で 真の linear ドメイン比較 (DNG+LSC 順方向適用 vs シミュ orthographic) を実施した結果,残差 2.63× が確定した(TEST_01 Step 8-13 参照).これは TECH_06 で予想した「真の残差 2.66×」とほぼ一致する値.

主因の絞り込み状況:

候補絞り込み状況出典
LSC 補正残差排除TECH_07(実機側で順方向適用が確立)
シミュ側のドメイン不一致(ガンマ等)排除TECH_08(網羅チェック済み)
LED 配光のモデル誤差ほぼ排除TECH_09(データシート Lambertian と数値一致)
残るのは「シミュ物理モデル誤差」絞り込み対象(本ドキュメント)—

候補の網羅整理(5 カテゴリ 18 項目) (Comprehensive Candidate List)

A. 物理光学モデル系(最有力候補を含む)

ID候補現状影響度検証状況
A1内壁の非 Lambertian 性(光沢成分)diffuse BSDF(完全 Lambertian)★ 大の可能性未検証.3D プリンタ白フィラメントは微妙に specular 成分を持つことがある.TECH_08 §残差 2.63× で「内壁の非 Lambertian 性・LED パッケージ周辺の光学効果」として示唆済
A2LED 個体差の配光ばらつき全 LED 完全均一小18 個平均で均される
A3樹脂ドーム形状の個体差データシート Lambertian 仮定小〜中実物の SMD 2835 ドームは樹脂で微妙な前方凸の傾向.データシート整合は TECH_09 で確認
A4LED 駆動電流のばらつき全 LED 完全同じ radiance小18 個並列接続で電流分配誤差は通常 ±5% 以内
A5発光面の物理サイズ2.8mm 角(パッケージサイズ)小Step 8-7 で 1.5mm 角試行.形状不変,mean のみ変化
A6LED 方向(光軸)全 LED (0, 0, -1)小実機の基板は平面で妥当
A7LED 位置精度Fusion STL 抽出済小Step 8-9 で正確化済(1% 以内の形状変化)
A8反射率 R = 0.85 → 0.89R=0.85(暫定)中Step 8-2 で 0.75〜0.92 スイープ済.Step 8-6 で物理整合点 R≈0.89 を導出.新方針下で再評価の価値あり
A9max_depth = 8 → 16+d=8小〜中Step 8-4 で 8→12 試行.勾配やや改善.CLAUDE.md には「キャリブは d≥12 推奨」と記載.新方針下で再評価の価値あり

B. 幾何モデル系

ID候補現状影響度検証状況
B1筐体内部の幾何精度Fusion 360 設計 STL中の可能性3D プリンタの積層・サポート跡・微細な凹凸はモデルに含まれない.実機 3D スキャンで定量化可能だが高コスト
B2メッシュ離散化精度STL → PLY 変換時の三角形数小〜中細かい曲面は離散化される
B3評価板の位置・向きFusion 360 設計通り小既知の精度(CAD 通り)

C. センサ・カメラ系(タイプ II 構造的差異)

TECH_08 §許容している構造的差異 のタイプ II 項目.白板撮影では許容と判断したが完全排除不能.

ID候補現状影響度検証状況
C1絞り・口径食orthographic で cos⁴ なし小実機側 lscMap で補正済(残差あり)
C2AF(焦点モデル)orthographic 無限遠小白板 DoF 内固定で許容
C3ピクセル積分点サンプリング + spp小spp=1024 で緩和
C4センサノイズなし小白板高輝度で相対影響小

D. 評価方法系

ID候補現状影響度検証状況
D1シミュ ROI と実機 ROI の物理的整合シミュ (24, 37, 464, 450) / 実機 (539, 1015, 1400, 1409)✓ クリア2026-06-02 検証完了:物理サイズ差 < 1%,中心位置差 < 1 mm.残差主因から除外(§ D1 検証結果 参照)
D2mean アンカー target_mean=207.82 の精度実機 1 ショットの値小形状指標には影響なし

E. 環境・運用系(実機側)

ID候補現状影響度検証状況
E1LED 温度上昇による光出力低下シミュは温度概念なし小18 個・通常室温で安定
E2筐体内壁の汚れ・経年劣化新品仮定小新品評価なら無視可

優先度評価の根拠

🥇 1 位: A1 内壁の非 Lambertian 性(光沢成分)

物理的根拠:

  • 現状の Mitsuba diffuse BSDF は 完全 Lambertian(cos θ で散乱)を仮定
  • 実物理: 3D プリンタ白フィラメント(PLA / ABS 等)は マット表面に見えても微妙な specular 成分を持つことが多い
  • 鏡面反射成分があると 多重反射の経路が変わり「形」が変化 する可能性が高い

変化が「形」に効く機序:

  • LED 直接光が壁に当たる → 光沢成分があれば 特定方向に強く反射
  • diffuse 100% なら均等分散だが、光沢があれば 評価板の特定領域に集中 する経路ができる
  • これが Y 軸単調勾配の「上端も均等に明るくならない」現象に対応する可能性

実装方法:

  • Mitsuba の roughconductor か roughdielectric を diffuse と混合(blendbsdf)
  • パラメータ: roughness(粗さ)と diffuse/specular 比
  • 物理動機: 3D プリンタ素材の実物理特性に近づける

期待効果:

  • 数値: 反射成分の方向性で多重反射経路が変化 → CoV / 勾配が動く可能性
  • 形: Y 軸単調勾配が崩れて中央ピーク楕円に近づく可能性(最も期待できる)

🥈 2 位: A8 反射率 R = 0.85 → 0.89(物理整合点)

物理的根拠:

  • 現状 R=0.85 は暫定値.Step 8-6 で 物理整合点 R≈0.89 が導出済(規格 LED radiance との物理的一致点)
  • インテグレーティングスフィア近似 1/(1-R) で R=0.85 → 0.89 は 多重反射ゲイン 6.67 → 9.09(1.36×)

変化が「形」に効く機序:

  • 反射率上昇 → 多重反射量増加 → 評価板への ambient 成分(均一光)が増える
  • Y 軸単調勾配の「上端の暗さ」がやや軽減される可能性

実装方法:

  • configs/scene_baseline.yaml の printer_white.reflectance を 0.85 → 0.89 に変更
  • spp / max_depth は据え置き

期待効果:

  • 数値: 過去 Step 8-2 で「弱い二次レバー」と判明済.CoV 数% 改善
  • 形: わずかに均一化方向だが大きな変化は期待しにくい

🥉 3 位: A9 max_depth 8 → 16+

物理的根拠:

  • 現状 max_depth=8 で多重反射の 後段(5〜8 回反射目)が打ち切られる可能性
  • 過去 Step 8-4 で 8→12 試行.CLAUDE.md には「キャリブは d≥12 推奨」と記載
  • 新方針(DNG+LSC linear)下では未再評価

実装方法:

  • configs/scene_baseline.yaml の max_depth を 8 → 16(または 12)
  • レンダ時間は depth に概ね比例(8.5 分 × 2 ≈ 17 分)

期待効果:

  • 数値: 多重反射の累積で勾配が緩和される可能性
  • 形: わずかに均一化方向

候補の組み合わせ評価

3 候補は 物理的に独立 なので組み合わせて試せる:

組み合わせ期待
A1 + A8 + A9全部入り.最大改善を狙う.レンダ時間 約 17 分
A8 + A9既存方針の延長.低コスト.大幅改善は期待しにくい
A1 単独「形」改善の最大候補単独.BSDF 実装が必要

ユーザー認識との差分整理

ユーザー認識(2026-06-02 議論)私の見立て差分
「LED 配光が一番影響」A2/A3 = 6 位(影響度 小〜中)TECH_09 でデータシート Lambertian 整合済みを踏まえて優先度低下
「筐体の反射率」A8 = 2 位賛成.物理整合点 R=0.89 への調整は次の試行候補
「反射回数」A9 = 3 位賛成.新方針下で再評価の価値あり
─A1 内壁の非 Lambertian 性が最有力(新規追加)私からの追加提案.完全 Lambertian は理想化しすぎ

「やらない」と判断したもの

以下は明示的に 本ドキュメントの優先度から除外 した:

候補除外理由
C1〜C4(タイプ II 構造的差異)TECH_08 で「白板撮影では許容」と判断済.舌模型評価時に再考
B1 筐体内部の幾何精度検証コスト高(実機 3D スキャン等が必要).他の候補を試した後の最終手段
A2/A3 LED 配光の個体差データシート Lambertian 整合済(TECH_09).実物の個体差ばらつきは実測ゴニオフォトメータが必要で高コスト
E1/E2 環境・運用系新品撮影・通常室温で影響軽微

D1 検証結果(2026-06-02 完了)

候補リスト 4 位の D1「シミュ ROI と実機 ROI の物理的整合」 を Step 8-14 候補 γ として 事前検証したところ,両者は物理的に同じ領域を見ていることが確認できた.設定変更は一切行わず,既存設定の数値検証のみで結論が出た.

検証手順

  1. シミュ ROI 物理範囲の算出 — configs/scene_baseline.yaml の orthographic 設定(position (0,0,-50), ortho_scale (50, 52), film 512×512)と configs/eval_baseline_linear.yaml の ROI (24, 37, 464, 450) から,評価板中心基準で X∈[-45.31, +45.31] mm, Y∈[-46.92, +44.48] mm(幅 90.63×91.41 mm) と算出
  2. 評価板 STL bbox 計測 — configs/meshes/照明ムラ補正ボード.stl を trimesh で計測:X=99 mm × Y=102 mm(既知値と一致)
  3. 実機画像の物理スケール算出 — reference_measurement/MiniTIAS_20260408_144434/MiniTIAS_20260408_144434.png(2448×3264)から評価板の縦方向黒縁を検出(H=1560 px).評価板 Y=102 mm より 物理分解能 0.0654 mm/px を確定(ピクセルアスペクト比 1:1 仮定で X 方向も同じ)
  4. 実機 ROI 物理範囲の算出 — roi_config.json の ROI (539, 1015, 1400, 1409) から,評価板中心基準で X∈[-44.79, +46.75] mm, Y∈[-47.53, +44.59] mm(幅 91.54×92.13 mm) と算出(画像 y→物理 Y は符号反転)

比較結果

項目シミュ ROI実機 ROI差
X 幅90.63 mm91.54 mm-0.91 mm (1.0%)
Y 高さ91.41 mm92.13 mm-0.72 mm (0.8%)
X 中心0 mm+0.98 mm+0.98 mm
Y 中心(符号反転後)-1.22 mm-1.47 mm-0.25 mm

→ 物理サイズは 1% 以内・中心位置は 1 mm 以内で一致.3 列パネル output/_slide_panels/roi_alignment_check.png(①実機画像 + 評価板境界・実機 ROI / ②シミュ輝度マップ + 評価板境界・シミュ ROI / ③物理座標系で両者を重ね合わせ)でも視覚的に確認.

判定と意味

  • 残差 2.63× の主因は ROI 整合ではないことが確定.D1 を候補リストから「クリア」として除外
  • 過去の設定者(おそらく Step 8 開始時の scripts/select_white_board.py GUI 選択 → シミュ側 ortho_scale 設計値)は 物理整合性を意識して ROI を揃えていたことが裏付けられた
  • 設定変更ゼロで結論が出たため,シミュ/実機双方の YAML・コードへの コミット可能な変更なし

副次発見

評価板は実機画像中央から 下方向に約 4.2 mm(65 px)オフセットして配置されている(カメラ取付位置 vs 評価板取付位置のミリ精度差)が,実機 ROI もそのオフセットに沿って選択されているため,物理領域としては板中心とほぼ整合している.

Step 8-14 候補選定(次のアクション)

D1(γ)が「クリア」と確定したため,残る選択肢は以下:

Step 8-14 候補内容状態推奨度
Step 8-14 候補 αA8 (R=0.89) + A9 (depth=16) の組み合わせ(低コスト・既存技術)未実施⭐⭐
Step 8-14 候補 βA1 内壁の非 Lambertian 性(光沢成分混合 BSDF)(高インパクト・実装中規模)未実施⭐⭐⭐
Step 8-14 候補 γD1 ROI 整合の再確認✓ 2026-06-02 完了(クリア)—
Step 8-14 候補 δβ + α 全部(D1 確認済のため γ 除外.最大改善を狙う・レンダ時間 ~17 分)未実施⭐⭐⭐

→ Step 8-14 として β(A1 単独)か δ(β + α 全部入り)が筋.β は「形」改善の単一実験として価値が高く,δ は実用上「全部やってどうなるか」を見る価値がある.

残差候補の出典

過去の試行履歴

仕様