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SmTIAS-LightSim / docs / 04_SPEC / SPEC_03_基準設計の物理構成.md

基準設計の物理構成 (Baseline Physical Configuration)

概要 (Overview)

Step 8(基準設計のキャリブレーション)で対象とする MiniTIAS 実機の物理構成を定義する. 本ドキュメントは実機写真(REFERENCE/)と Fusion 360 設計データから読み取った構成を、シミュレーション側でどう表現するかの 認識合わせ を残すためのものである.

仕様確定前の暫定値(材料パラメータ・LED 強度等)はキャリブレーション反復で更新する.

実体は configs/scene_baseline.yaml.

座標系 (Coordinate System)

  • 単位: mm(YAML 内).シミュレータには m に変換して渡す.
  • 原点: STL モデル(Fusion 360 エクスポート)の座標系を踏襲.
  • 主要部品の Z 座標(中心):
    • 評価板(照明ムラ補正ボード): Z=+4(厚み Z=-4.5〜+12.5)
    • LED 基板カバー: Z=-65.3
    • スマホ(SH-02M): Z=-154.4

評価板(照明ムラ補正ボード)

構造

面法線Z 座標構造役割
表面(外側)+Z 法線Z=-2.5〜+12.5(凹凸)楕円窓 + AR マーカー + カラーチャート撮影された画像で見える側.スマホで写真を撮るときに映る面
裏面(内側)-Z 法線Z=-4.5(平面)平坦な取付面照度均一性の評価対象面.LED 光がこの面に均一に届くことが MiniTIAS の設計目的

評価対象面

評価対象は内側(平坦面、-Z 法線面)の照度分布.照明ムラ評価とは「この面に届く光が空間的に均一かどうか」を測ること.

LED(光源)

物理仕様

項目値根拠
パッケージSMD 2835REFERENCE/smd2835_datasheets.png
サイズ2.8 × 3.5 mmデータシート(Samsung / Bridgelux / Lumileds 共通)
配光角(ビーム角)120°(≒ Lambertian)データシート

モデル化(光の広がり方)

  • Mitsuba の AreaLight (rectangle) として表現
  • 発光面の 片面のみ から放射する(direction ベクトルが示す向き側.裏面は完全に発光しない)
  • 放射分布は Lambertian(法線方向で最大,cos(θ) で減衰)
    • データシートのビーム角 120° は半値全幅 ±60° に相当し,Lambertian の cos(60°)=0.5 と一致するため矛盾なし
  • 各 LED の direction は z 軸マイナス方向 (0, 0, -1) で全 18 個共通.光は -Z 半球側に Lambertian で広がる
  • radiance は暫定 1.0 W/sr/m²(キャリブレーション反復で実機 W 値に校正予定)
    • 全光束への換算: Φ [W] = radiance × area × π(Lambertian 半球積分)
    • 1 LED あたりの面積: 2.8 × 3.5 = 9.8 mm² = 9.8e-6 m²
    • radiance=1.0 のとき Φ = 1.0 × 9.8e-6 × π ≈ 3.08e-5 W(極めて小さい.実機 LED は ~0.2 W なので約 6500 倍の校正が必要)

配置

実機の LED 基板は 前側のでっぱりの直角部分 に取り付けられている.3 基板を Z 軸まわりに ±90° 回転で配置:

基板基板中心 mmLED 並び方向個数
下(Y-)(0, -70.2, -65.3)X 軸6
右(X+)(70.2, 0, -65.3)Y 軸6
左(X-)(-70.2, 0, -65.3)Y 軸6

各基板上の LED 6 個は基板の長手方向に約 8.7 mm 間隔で等間隔配置.総数 18 個.

※ 左右基板の中心座標は STL の下基板(LED基板カバー.stl、bbox 中心 (0, -70.2, -65.3))を基準に Z 軸まわり ±90° 回転で算出した推定値.Fusion 360 設計の実位置と微小なズレがある可能性あり.

カメラ(センサ)

評価板の 内側(平坦面)の照度マップを 2D 画像として直接取得 するため、orthographic(平行投影)センサを使う.

項目値意図
typeorthographicパースペクティブ歪みを排除し、評価板の各位置の輝度を pixel と 1 対 1 対応させる
position(0, 0, -50) mm評価板の裏面(Z=-4.5)より少し離れ、かつ LED 基板(Z=-65.3)より評価板側.ray の経路に LED が入らない位置
target(0, 0, 0) mm評価板の方向(+Z)を見る
ortho_scale(50, 52) mm評価板の bbox(X=99, Y=102 mm)に余裕を持たせた半幅

カメラ位置が評価板に近すぎる(Z=-10 等)と Mitsuba の orthographic の near_clip 内に入って何も映らないので注意.

レンダリング設定(多重反射の扱い)

Mitsuba 3 の path tracer(モンテカルロ光線追跡)を使用し、多重反射(インターリフレクション)まで含めて計算する.

項目値意味
integratorpath多重反射を考慮した path tracing.LED → 内壁 → 評価板 のような間接照明経路もすべて積分する
max_depth8ray の最大反射回数.8 回までの反射を追跡(実用上 MiniTIAS の白筐体内多重反射には十分)
spp1024pixel あたりサンプル数.大きいほどノイズ減・計算重.spp 校正済み(下記「キャリブレーション経過」参照).llvm_ad_rgb・512×512 で 1 レンダ約 9.6 分
variantllvm_ad_rgbLLVM JIT による RGB レンダリング.LLVM-C.dll が PATH(または DRJIT_LIBLLVM_PATH)で参照可能なこと

多重反射の意味

LED 光が評価板に届く経路は以下のすべてが計算される:

  1. 直接光: LED → 評価板(評価板の表面に直接当たる光)
  2. 1 回反射: LED → 内壁 → 評価板
  3. 2 回反射: LED → 内壁 → 内壁 → 評価板
  4. ...
  5. max_depth (8) 回反射まで

MiniTIAS は 白い筐体内壁の多重反射で照明を均一化 する設計のため、多重反射の正確な計算が CoV 値の再現に必須.

制限

  • 現状 Phase A のベイク(visualize/baker.py)は直接照度のみで多重反射を考慮しない.多重反射込みの照度マップを得るには本ドキュメント記載の path tracer(sm-render)を使う.
  • max_depth を超える反射は無視される.白筐体(reflectance 0.85)で 8 回反射した光のエネルギーは初期の 0.85^8 ≈ 27% まで減衰しているため、無視しても影響は小さい.

筐体(材料)

実機の筐体構造物(前側 / 後側 / LED 基板カバー / 評価板)は すべて同じ 3D プリンタ白素材(PLA / PETG / ABS の白フィラメント)で造形されている.スマホホルダのみ別素材.多重反射で照明を均一化する設計.

部品材料定義名材料モデルreflectance備考
前側 / 後側(筐体)printer_whitediffuse0.853D プリンタ白フィラメント(暫定値.実物の素材データシートで再校正)
LED 基板カバーprinter_whitediffuse0.85同じ 3D プリンタ白素材.不透明な白プラの枠で LED の周囲を囲む構造であり、LED 光が透過するディフューザーではない
評価板printer_whitediffuse0.853D プリンタ白.照度マップ上の輝度から照度への換算は E ≈ pixel × π / 0.85
スマホホルダholder_darkdiffuse0.50別素材(推定.要確認)
スマホ本体(SH-02M)phone_body_darkdiffuse0.05樹脂・金属の黒系

LED 基板カバーの取り扱いについて

当初 thindielectric(半透明 PMMA)でディフューザーとしてモデル化していたが、実機は 3D プリンタ白素材(不透明)であることが判明したため diffuse 0.85 に変更した.これにより:

  • LED 光は基板カバーを 透過しない.Lambertian の発光面(AreaLight)から直接シーン空間に放出される
  • 基板カバーの表面は 白プラとして拡散反射 に寄与し、多重反射の経路の一部になる
  • 「半透明ディフューザーで散乱しない」問題は解消(そもそも実機にディフューザーは存在しなかった)

キャリブレーション目標(実測値)

PLAN_02 より:

指標実測値仮置き許容範囲
CoV0.0426±0.005
中心/周辺比1.064±0.02
勾配 (%)6.23±1.5

キャリブレーション経過(spp 校正と診断)

spp 128 → 1024 の数値比較(2026-05-18)

代表実測 1 枚(MiniTIAS_20260408_144434、ROI 物理対応済み)に対するシミュ結果:

指標実測 (target)spp=128spp=1024実測との差
CoV0.04260.2360.1834.3×
std6.2635.8327.85
max/min 比1.39211.594.273.1×
mean146.71151.79152.02≈ 一致
中心/周辺比1.06501.3301.3281.25×
勾配 %6.1024.8324.724.1×

診断結論:ノイズ要因 vs 物理モデル要因の切り分け

spp を 8 倍にして判明した切り分け:

  • モンテカルロノイズ由来だった成分:max/min 比 11.6→4.3、std 35.8→27.9、CoV 0.236→0.183.極端な外れ値ピクセルが消えた.
  • 物理モデル由来(spp 非依存)の成分:中心/周辺比 (1.330→1.328) と勾配 % (24.83→24.72) はほぼ不変.計算ノイズではなく構造的な空間勾配.

ノイズ分解(std² = 信号² + ノイズ²、ノイズ ∝ 1/√spp)で逆算:

  • spp=1024 の残留ノイズ std ≈ 8.5、真の物理信号 std ≈ 26.5
  • spp→∞(ノイズゼロ)でも CoV は ≈ 0.174 までしか下がらない(実測 0.0426 の約 4 倍)
  • ⇒ spp をさらに上げても CoV は 0.183→0.174 程度で頭打ち.spp 増加は費用対効果なし.spp=1024 を基準設定として確定.

残差の主因(物理モデル差)

CoV 4 倍差・勾配 4 倍差の主因は シミュの照度が周辺へ急峻に落ちる構造的空間勾配.これは実機との物理差というより 比較スケールの差 が支配的:

実測 PNG は実機 ISP の レンズシェーディング補正(周辺減光の電子補正)込みで、シミュは線形放射輝度(補正なし).実測データ提供側 README(reference_measurement/.../README.md 注意点)も明示:

レンズシェーディング補正が ON だと周辺光量低下の一部は ISP が補正している.「シミュの勾配が実測より大きい」ことが期待される(このため 6% は補正後の残存ムラ).

今回の観測(シミュ勾配 24.7% ≫ 実測 6.1%)はこの予測と整合.次の改善はレンズシェーディング補正の後処理適用、または筐体内壁反射率スイープ(次セッション着手).

想定どおりの挙動(追加対応不要)

以下は実機と一致する挙動として 意図的にそのままにしている 項目:

  1. 評価板の楕円窓からの光漏れ: 楕円窓は撮影用開口で、均一性測定時にも何も塞がない.シミュ上で楕円窓から外部に光が逃げる挙動は実機と整合.
  2. 筐体開口部(スマホ取付穴等)からの光漏れ: 同上.実機でも漏れる構造で、シミュも同じ.
  3. 被写体(白板)は別途配置しない: 「補正ボード」= 評価板(照明ムラ補正ボード)そのものを指す.楕円窓の奥に追加の白板は置かない.

既知の差分(実機との不一致)

Step 8 進行中に把握した、実機との未解消の差分:

  1. 3D プリンタ白素材の反射率の正確な値: 暫定 0.85 だが、実物のフィラメント(PLA / PETG / ABS のどれか)と分光反射率データで再校正が必要.
  2. 左右 LED 基板の正確な位置・向き: STL から推定した座標で、Fusion 360 設計とのズレがある可能性.
  3. LED 1 個あたりの実 W 値: 現状 radiance=2807.25(実測 mean=146.7 にスケール校正済み).mean は一致するが、実機 SMD 2835 の規格値(~0.2 W)からの物理的整合性は未検証.
  4. スマホホルダの実素材: 推定 holder_dark (0.50).実物確認が必要.
  5. 【最大の差・主因】ISP レンズシェーディング補正によるスケール差: 実測 PNG は実機 ISP の周辺減光電子補正込み、シミュは線形放射輝度(補正なし).このため シミュ勾配 24.7% ≫ 実測 6.1%(実測データ提供側も予測済み).CoV 4 倍差の主因.spp 由来ノイズではなく構造的(「キャリブレーション経過」参照).対策はレンズシェーディング補正の後処理適用.
  6. 評価 ROI の不一致(解消済み): ROI を実機と物理対応させ(configs/eval_baseline.yaml = pixel (24,37,464,450))、sm-evaluate は実測 PNG に対し MiniTias-Evaluation と小数点 14 桁レベルで一致を確認済み.評価ロジック起因の差はない.

参照(References)